
夜間や会議中の動悸──それは心臓のサイン?ストレスの表れ?
突然ドキドキと胸が騒ぎ出すと、「心臓の病気かもしれない」と不安が頭をよぎるものです。ご家族に不整脈の既往がある方なら、遺伝的なリスクも気になるでしょう。一方で、仕事の重圧や睡眠不足が続く時期には「ストレスのせいかも」とも感じ、どちらを疑えばよいか判断がつかないまま受診を先送りにしがちです。この記事では、動悸の原因をセルフチェックできる5つの基準と、循環器内科・心療内科どちらを先に受診すべきかの判断フローをお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 発生タイミング・脈の乱れ方・随伴症状など5つの軸で、ストレス性と心臓由来の動悸をセルフチェックできる
- 胸痛や意識障害を伴う場合は救急対応、数分で治まり日常生活に支障がなければ計画的受診が目安となる
- 更年期・甲状腺・パニック障害など、心臓とストレスの二択に収まらない動悸の原因にも注意が必要
- ストレス性の動悸と心臓由来の動悸を見分ける5つのセルフチェック基準
- 「すぐ救急車」か「翌日受診」か──動悸の緊急度を判断する目安
- 意外と見落とされやすい動悸の原因──更年期・甲状腺・精神疾患の重なり
- 循環器科と心療内科どちらを先に受診すべきか──症状別フローチャート
- 大船駅周辺で動悸のストレス要因を相談できる心療内科という選択肢
ストレス性の動悸と心臓由来の動悸を見分ける5つのセルフチェック基準

動悸を感じたとき、「ストレスだろう」と自己判断する方もいれば、「心臓の病気では」と過度に心配する方もいます。どちらのパターンも、適切な受診を遅らせてしまいかねません。ここでは発生タイミング・脈の乱れ方・随伴症状・再現性・誘因という5つの軸で、ご自身の動悸がどちらに近いかを整理していきましょう。
発生タイミングと持続時間──安静時か緊張場面かで異なるサイン
ストレス性の動悸は、プレゼン前や会議中、夜間に不安が膨らんだ瞬間など、心理的な負荷と連動して現れやすいのが特徴です。場面を離れたり深呼吸をしたりすると数分〜十数分で落ち着く傾向があります。
一方、心疾患に由来する動悸は安静時や睡眠中にも突発的に起こることがあり、数十分以上持続するケースも報告されています3。「リラックスしているはずなのに脈が乱れる」という場合は、心臓そのものの精査を検討したほうがよいでしょう。
脈の乱れ方と随伴症状──「速い」「飛ぶ」「胸痛」の違いに注目
ストレス性の動悸では脈が速くなる(頻脈)ものの、リズム自体は比較的規則的なことが多く、不安感・息苦しさ・手の震えといった自律神経症状を伴いやすいとされています。
これに対して、不整脈や期外収縮といった心疾患性の動悸では脈が「飛ぶ」「不規則になる」と感じやすく、胸痛やめまい、一瞬意識が遠のくような感覚が加わる場合があります1。自律神経失調症による動悸と期外収縮は自覚症状が似ているため、脈のリズムが規則的かどうかがひとつの手がかりになります。
再現性と誘因──カフェイン・アルコール・睡眠不足が隠す複合要因
同じ場面で繰り返し動悸が起こるなら、ストレスや不安との関連が高いと考えられます。逆に、明確なきっかけがなく不規則に生じる動悸は、心疾患の可能性を含めた精査が勧められるでしょう1。
見落としがちなのが、カフェインやアルコール、喫煙、慢性的な睡眠不足といった嗜好品・生活習慣の影響です。これらはストレスと複合的に作用し、動悸を増幅させることがあります。飲酒後に動悸が出やすい方は「お酒のせい」と片付けず、誘因を記録しておくことが大切です。
スマートウォッチの心電図記録は受診時にどう役立つか
動悸は診察室で再現されにくいため、医師にとっても発作時の情報が不足しがちです。Apple Watchなどスマートウォッチの心電図機能を使い、発作時の心拍データを記録しておけば、受診時に客観的な判断材料を提示できます。
ただし、これらの機器は医療機器としての認証範囲が限定されており、記録だけで診断が確定するわけではありません。あくまで「受診の質を上げるツール」として活用するのが適切です。
「すぐ救急車」か「翌日受診」か──動悸の緊急度を判断する目安
動悸を感じたとき、最も迷うのは「今すぐ医療機関へ行くべきなのか」という判断ではないでしょうか。ここでは緊急対応が必要なケースと、翌日以降の計画的な受診で対応できるケースの境目を整理します。
救急車を呼ぶべき症状──胸痛・意識障害・冷や汗が重なるとき
強い胸痛が15分以上続き、冷や汗や意識の遠のきを同時に伴う場合は、急性心筋梗塞や重篤な不整脈の可能性を考慮し、ためらわず救急対応を求めてください1。呼吸困難で横になれない、脈拍が極端に速い(1分間に150回以上)または極端に遅い(40回以下)といった状態も、すぐに医療機関へ連絡すべき目安です。
「大げさかもしれない」と遠慮する方は少なくありませんが、心臓の緊急事態は時間との勝負になります。該当する症状がそろったときは、迷わず行動に移してください。
翌日以降の受診で問題ないケースの見極めポイント
動悸が数分以内に自然と治まり、胸痛・失神・強い息切れを伴わず、日常生活に大きな支障がないレベルであれば、翌日以降に計画的に受診する形でも対応できると考えられます3。たとえば「会議前にドキドキしたけれど、席を外したら落ち着いた」というパターンはストレス性の可能性が高い典型例です。
ただし、こうした動悸が週に何度も繰り返されるようなら、放置せず早めに受診することをお勧めします。ストレスの蓄積を示すサインであると同時に、背景に軽度の不整脈が隠れているケースも否定できないためです。
意外と見落とされやすい動悸の原因──更年期・甲状腺・精神疾患の重なり

動悸の原因を考えるとき、「心臓か、ストレスか」の二択に絞りがちですが、実際にはどちらにもきれいに当てはまらない要因が潜んでいることがあります。とくに30〜40代の女性が見落としやすいポイントを押さえておきましょう。
更年期のホルモン変動による動悸とストレス性動悸の違い
40代前後になると、エストロゲンの分泌が揺らぎ始め、自律神経のバランスが乱れやすくなります。この変動に起因する動悸は、ホットフラッシュ(急な発汗やほてり)を伴うのが特徴的です。
ストレス性の動悸でも発汗は起こりますが、冷や汗や手のひらの湿り気が中心で、ほてり感は目立ちにくい傾向にあります。ただし更年期の体調変化そのものがストレス源となり動悸を悪化させるケースも珍しくないため、「年齢のせい」と自己完結せず、一度は専門的な評価を受けることをお勧めします。
甲状腺機能亢進症やパニック障害が動悸に紛れるケース
バセドウ病に代表される甲状腺機能亢進症では、体重減少・手指の細かい震え・暑がりといった全身症状を伴う動悸が特徴です。血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べれば、比較的早い段階で鑑別が可能とされています2。
一方、パニック障害では激しい動悸に加えて強い恐怖感や過換気症候群(過呼吸)が出現することが多く、「このまま倒れるのでは」という切迫した不安を伴います。どちらも心電図検査では目立った異常が出にくい場合があるため、動悸以外にどんな症状があるかを医師に正確に伝えることが鑑別の鍵になります。
「動悸=心臓か精神の二択」という思い込みが招く受診の遅れ
循環器内科で「心臓には異常が見当たりません」と言われると安心する半面、動悸が続いていても「気のせいだろう」と受診をやめてしまう方がいます。しかし、複数の原因が重なり合って動悸を引き起こしているケースは決して珍しくありません。ストレス・ホルモン変動・甲状腺の問題が同時に存在していることもあり得ます。ひとつの診療科で異常なしと言われても、別の原因が残っている可能性を頭に入れておくことが大切です1。
循環器科と心療内科どちらを先に受診すべきか──症状別フローチャート
自分の動悸の特徴がおおよそ整理できたら、次は「どの診療科に行くか」を決める段階です。限られた時間で的確な診療科を選びたい方に向けて、症状別の判断フローを示します。
まず循環器内科を選ぶべきケース──脈の不規則・家族歴・胸痛がある方
安静時にも脈が飛ぶ感覚がある、ご家族に不整脈や心疾患の既往がある、動悸と同時に胸痛やめまいを伴う──こうした条件にひとつでも当てはまるなら、まず循環器内科で心電図検査・心エコー・血液検査などを受けることを推奨します1。
検査の結果、心臓の器質的な異常が見つからなければ、そこからストレスや自律神経の問題へ視点を移し、心療内科への紹介に進むのが一般的な流れです。お母さまが不整脈で入院された経験があるなど家族歴が気になる方は、「まず心臓を除外する」という順番が合理的でしょう。
心療内科を先に検討してよいケース──緊張場面限定・不安感・息苦しさが主体の方
プレゼン前や対人場面など特定のストレス状況でのみ動悸が起こり、不安感・息苦しさ・手の震えなど精神的な症状が中心であれば、心療内科の評価から始めるほうが効率的なこともあります3。自律神経失調症やパニック障害の初期対応を早い段階で受けられるため、症状の長期化を防ぎやすいというメリットがあります。
心療内科の受診後も心疾患が疑われた場合は循環器内科へ紹介します。
心療内科への受診は「弱さ」ではない──職場の評価を気にする方へ
「心療内科に行く=メンタルが弱いと思われるのでは」と不安を感じる方は少なくありません。しかし、ストレスが身体症状を引き起こすメカニズムは医学的に確立された領域であり、動悸という身体の反応を起点に受診するのはきわめて合理的な判断です。
コロナ禍以降、ストレスに関連した心臓への相談は世界的にも増加していることが報告されています2。動悸を放置して業務パフォーマンスが低下するほうが、長い目で見ればリスクが大きいと考えてみてください。
大船駅周辺で動悸のストレス要因を相談できる心療内科という選択肢
セルフチェックや受診フローを通じて「ストレスや不安が関わっていそうだ」と感じた方に向けて、鎌倉市の大船駅周辺で通える心療内科の具体的な情報をお伝えします。
動悸の背景にあるストレス・不安を丁寧に評価する診療の流れ
心療内科の初診では、動悸の頻度・発生状況・持続時間・随伴症状などを丁寧に問診するところからスタートします。「いつ、どんな場面で、どのくらい続くか」を事前に整理しておくと、限られた診察時間を有効に使えるでしょう。
当院では患者様お一人おひとりのお話を丁寧に伺い、ご意向を尊重した治療方針をご提案しています。心臓の器質的な問題が疑われる場合は循環器内科への紹介を行いますので、「どちらの診療科を選べばよいかわからない」という段階でも安心してご相談ください。
仕事を休みにくい方が通いやすい大船駅前の立地と診療体制
鎌倉市にお住まいで日中は仕事を休みにくいという方にとって、通院のしやすさは診療科選びの大切な要素です。大船駅前笠間口メンタルクリニックは大船駅笠間口から徒歩すぐの立地にあり、土曜日も終日診療に対応しています。
24時間対応のWEB予約システムも導入しているため、思い立ったタイミングで予約を入れられるのも、忙しい方にはうれしいポイントでしょう。診療室は防音設計に加えてサウンドマスキングを導入しており、周囲の目を気にせずお話しいただける環境を整えています。
まずは相談から──予約の取り方と受診前に準備しておくとよいこと
受診をためらっている方にお伝えしたいのは、「まずは相談だけでも構わない」ということです。当院は「気軽に相談できて頼りになるクリニック」を目指しており、本当につらくなる前にお話を聞かせていただくことを大切にしています。
受診前の準備としては、動悸が起きた日時・状況・持続時間をメモしておくと診察がスムーズです。スマートウォッチで心拍データを記録している方は、そのデータの持参も有用です。「受診するほどなのかわからない」と迷っている段階こそ、一歩を踏み出すタイミングかもしれません。
よくある質問
Q. ストレスによる動悸はどんな感じですか?
A. 緊張する場面や不安を感じたときに「心臓がドキドキする」「胸がザワザワする」と表現される方が多いです。脈は速くなるもののリズム自体は規則的で、息苦しさや手の震え、発汗を伴う傾向があります。ストレス源から距離を取ると数分〜十数分で落ち着くのが典型的なパターンです。
Q. 心臓が弱っているサインにはどのようなものがありますか?
A. 安静時でも脈が飛ぶ・乱れる、軽い動作で強い息切れが生じる、足のむくみが目立つ、横になると息苦しい──こうした症状が複数重なる場合は、循環器内科への早めの受診をお勧めします。ただし、これらの症状があるからといって必ず心疾患とは限らないため、自己判断で結論を出さないことが大切です。
Q. 飲酒後に動悸がするのはなぜですか?
A. アルコールには血管を拡張させ心拍数を上げる作用があります。また、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが交感神経を刺激することも動悸の一因とされています。日常的にストレスを抱えている方は、飲酒が動悸をさらに増幅させることがあるため、飲酒量や頻度を記録して受診時に伝えると鑑別の助けになります。
Q. 自律神経からくる動悸とはどのようなものですか?
A. 交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで起こる動悸を指し、自律神経失調症の症状のひとつとして知られています。特定の病変がなくても生じるため、心電図検査では異常が見つからないことが少なくありません。ストレス管理や生活習慣の見直しに加え、必要に応じて心療内科で専門的な評価を受けることが対処の第一歩になります。
Q. 循環器内科で異常なしと言われたのに動悸が続く場合はどうすればよいですか?
A. 心臓の器質的な問題が除外されたのは安心材料ですが、動悸が続いている以上、ストレスや自律神経の問題、甲状腺ホルモンの異常など別の原因が残っている可能性があります。心療内科へ相談して、身体症状と心理的要因の両面から評価を受けることを検討してみてください。
参考文献
1. 日本循環器学会. https://www.j-circ.or.jp/
2. Tang Y, Ma S, Luo G et al. "The change in pediatric subject symptoms during the COVID-19 pandemic in China: an increase in cardiac consultation." *Italian journal of pediatrics* (2022). PMID: 36510285. DOI: 10.1186/s13052-022-01384-6
3. Evans T, Holdsworth DA, Jackson S et al. "Managing palpitations in the military patient." *Journal of the Royal Army Medical Corps* (2015). PMID: 26243805. DOI: 10.1136/jramc-2015-000507
日本精神神経学会専門医
日本医師会認定産業医
